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N先生

高校生の時、とてもお世話になった先生がいた。
N先生という。

N先生は国語の先生だった。
髪はボサボサ、よれた白いTシャツに、
ひざ丈のズボンとサンダル、
いつも不精ひげを生やしていた。
初めて教室に現れた時、
クラス中の生徒が笑いながら騒ぎ始めた。

N先生の授業は、
その風貌同様、すっトボケていてなんだか面白い。

――祇園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり――

「つまり祇園精舎の鐘の音は、
ショギョムジョショギョムジョショギョムジョ~、
って聞こえるんだな」

あの時は面白い先生だな~と思ったが、
こうやって書いてみると、
これは国語の先生共通のネタかもしれない。
書いてあることそのまんまだし、
別にひねりも何もない。
でもN先生が言うからいいのか…。

とにかくN先生は生徒たちに慕われていた。

さて、僕は卓球部に所属していて、
高校2年生になったとき、
当たり前だが卓球部に後輩が入って来た。
どんなカワイイ後輩かな~と(変な意味じゃありません)
楽しみにしていたのだが、
後輩たちは僕とすれ違っても、
軽く首を縦に振る程度の挨拶しかしなかった。

余談だが、僕は小中高大と卓球をやっていたのである。

余談終わり。

中学生の時は、
まず後輩が先輩に大きな声で挨拶をした。
そういうものだと思ってそのまま高校に入ったため、
後輩が挨拶をしないことに思い切り違和感を感じていた。

ある日、N先生にそのことを言った。

「先生、最近の後輩はろくに挨拶もしないんですよ」

するとN先生はこう言った。

「お前は、口うるさいジジイになりそうだなあァ」

ジ…ジジイ…?
ガツンと殴られた気分だった。
まだうら若い16歳の高校生が、
将来は口うるさいジジイになってしまうのだ。

そりゃいかん。

この日、

「自分は正しい」

という考えは幻想なのかも…と思った。
大体において、名前がよろしくない。
幻想を抱いてしまった原因はここにもある。

正一。

一番正しいのである。
こんな若いうちから「自分は正しい」なんて考えていたら、
おそらく道を踏み外す。

また余談だが、
両親は「一番正しい」などという願いなど込めていなかった。
父の名が「正」で、
その一番最初の子だから「正一」なのだそうだ。
その単純さは、なかなか素晴らしいと思う。


さて、それから数年が経って。

二十歳になった時、
N先生が町田の小洒落たバーに連れて行ってくれた。
あの冴えない風貌のN先生が、
生のJAZZピアノが流れる店を知っていることに驚いた。

こいつが二十歳になったら連れてこよう、
と思っていたのだろうか。
何だかよくわからない名前のお酒を注文する先生は、
やっぱり大人に見えた。
そして、なんとなく嬉しそうに、
でもなんとなく寂しそうに見えた。

その日は、N先生を交えて高校のOBの飲み会があり、
宴が終わって次はどこに行こうかとみんなで話していたのだが、
「俺はこいつとちょっと話がある」
とN先生が言って、ふたりきりになった。

先生はふたりきりが良かったのである。
なんだかありがたかった。

酒を飲みながら、
色々な他愛ない話をたくさんした。
そしてふと、N先生が言った。

「俺の人生はこれで良かったのかなって思う」

高2のジジイ発言に続き、
またまたN先生に驚かされた。

確かN先生にはお子さんが4人くらいいて、
優しそうな奥さんがいて、
とにかく幸せそうな家庭があった。
悩みなどなさそうに見えた。

実際、家庭に対して不満があったわけではないと思う。
何か大きな後悔があるわけでもないと思う。

僕は、
大人というのは自分と違って、
とても立派な人たちのように思っていた。

でも、若者と同じように迷ったり悩んだり、
人生に疑問を持ったりするのだと、
自分と同じように弱い部分を持った人間なのだと、
その時初めて知った気がした。

あの日、自分の本音を聞かせてくれたN先生は、
大人の仲間入りをした僕を迎えてくれたのかもしれない。
そして弱音を吐きたかったのかもしれない、
なんて考えすぎか。

その後、N先生とは連絡を取っていないが、
またいつかぜひ会いたいと思っている。

その時はどんな風に驚かせてくれるのか、
恐ろしいような楽しみなような、
とにかく僕にとって衝撃的な面白い先生なのである。




***本日のきよこちゃん***


最近毎日、


毎日カーネーションが良いというきよこちゃん


と言うきよこちゃん。


親戚に預けていた幼い次女を、


母親の糸子が迎えに行くシーンで、


カーネーションに泣けてきちゃうきよこちゃん


と言ってました。


やっぱり母親なんですね…。




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No title

とてもイイお話・・・e-414
心が温まりましたe-446

いつかN先生に会えるとよいですねe-420

てった先輩の結婚式でe-348

Re: No title

cyuukoさん

どうもありがとうございます。

何気ない日常の出来事ですが、
いつまでもはっきりと覚えていることってありますよね。
当時はそんなに意識していなかったことも、
こうして思い出すということは、
少なからず衝撃があったからなのだと思います。

さて。

「僕の結婚式で(!)」

なんて突っ込まれるとは(笑)
してやられました~。
プロフィール

五十嵐正一

Author:五十嵐正一
初めまして!
神奈川県相模原市在住の声楽家の五十嵐正一です。小田急線相模大野駅から徒歩1分の音楽工房 うたの木で、声楽のレッスン、合唱・コーラスも行っています。
※歌のお仕事も承ります。お気軽にご連絡ください。

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